ウィーン発のガラスブランド、Ursula Futura。ブランド名になっている「ウルスラ」は、実在の人物ではない——デザイナーが自分のなかに見つけた、もうひとりの自分だ。パリの展示会メゾン・エ・オブジェで小さなブースに足を止めたeditのバイヤーに、出会いの話を聞いた。
色で足が止まった
編集部: メゾン・エ・オブジェで見つけたと聞いて、まず気になったのが「どうやって見つけたの?」で。あの会場、膨大な量のブランドですよね。
バイヤー: ほんとに膨大で(笑)。キャンドルとか香りとか、ジャンル別にブースが並んでいるんですけど、全部はとても見きれないんですよ。で、歩いていたら、ウルスラのブースがぱっと目に入って。小さいんだけど、色使いが優しくて。あ、かわいい、って。

編集部: 直感で足が止まった感じ。
バイヤー: まさにそう。ペールトーンのガラスを使ったブランドって他にもあるんです。ただ、ああいうきれいなガラスのブランドって、いわゆるオブジェ的なものが多くて。飾るためのガラス。ウルスラは違って、吹きガラスのクラフト感がちゃんとあるのに、キャンドルとして実際に火を灯せる。飾って終わりじゃないところが、いいなと思いました。
編集部: で、このキャンドル、よく見ると封蝋みたいなスタンプが押してあるんですよね。
バイヤー: そうそう、シーリングスタンプ。2つの香りがあるんですけど、その違いがスタンプの図柄で分かれていて。手の形のほうが「The Hand」、トンボが「The Dragonfly」。
編集部: あ、ちゃんと意味が紐づいてるんだ。
バイヤー: そうなんです。言われないと気づかないくらいさりげないんだけど、知ると「あ、そういうことか」ってなる。The Handのほうはマンダリンとシダーの香りで、イモーテルっていうお花の香りも入っていて、火を灯すとガラスの内側からじわっと色が透けてくるんですよ。それがまたきれいで。
ウルスラさんはいなかった
編集部: ここまでずっと「ウルスラ」って呼んでますけど、実はこのブランド、ちょっと変わった話があるんですよね。
バイヤー: そう! これが一番おもしろかった話で。ブースにいたのがカトリンさんっていう女性で、すごくフレンドリーな方だったんですけど。私、てっきりブランド名から「ウルスラさんですか?」って聞こうとしたんです。
編集部: あ、聞きそうになった(笑)。
バイヤー: 危なかった(笑)。聞く前にカトリンさんが自己紹介してくれたんですけど、「Ursula Futuraっていうのは私のオルターエゴで、架空の人物なの」って。要するに、ブランドをつくるときに、理想のデザイナー像をペルソナとして立てたんだと。
編集部: えっ、おもしろい。架空のキャラクターがブランドの顔になっている?
バイヤー: そうなんです。カトリンさんのなかにある、遠慮しない自分。大胆で、自由で、好きなものに一切妥協しない——そういう自分に「ウルスラ」って名前をつけて、その人格でデザインしている。だから「ウルスラならこうするだろう」っていう判断でプロダクトが生まれるんですよね。
編集部: それでブランドの雰囲気に一貫性があるんだ。
バイヤー: そう、まさにそれ。架空の人物をつくるって聞くと変わった手法に聞こえるかもしれないけど、結果としてブランドの芯がぶれない仕組みになっている。会場で話を聞きながら、なるほどなあって思いました。
まだ誰も紹介していない
編集部: editには名の知れたブランドも並んでいますけど、Ursula Futuraはかなり毛色が違いますよね。
バイヤー: そうですね。editをつくっていくなかで、名作とか老舗って言われるタイムレスなブランドはしっかり揃えたい。でも、それだけだと棚がどこかで見たことのある景色になっちゃうというか。
編集部: ああ、わかります。安定はするけど。
バイヤー: そう。だから、スモールバッチの作り手さん——小さな規模でこつこつものをつくっている方にも出会いたいとずっと思っていて。日本でもそうだけど、ヨーロッパにも、昔からいいものをつくっているのに国外に展開していない方って多いんですよね。ヨーロッパ圏内だけで活動していて、外に出ていない。すよね。
編集部: ウルスラはまさにそのタイプ。
バイヤー: まさに。展示会で直接会えたからこそ見つけられたブランドだと思います。WEBだけでは出会えなかったかもしれない。
編集部: 最後に。実物を見たら何が違いますか?
バイヤー: 写真だと「きれいなガラスだな」で終わっちゃうんですけど、持ってみると厚みと重さがあって、ちょっとひんやりしていて。ひとつひとつ形が微妙に違うのも、並べるとよくわかるんです。あと、やっぱり火を灯したときが全然違う。ガラスの内側から光が透けてくる感じは、写真じゃ伝わらないので。
編集部: それはぜひ見てみたい。
バイヤー: 見た瞬間、editの空気に合うと思ったんですよね。色のトーン、ガラスの質感。ぜひ店頭で、手に取ってみてほしいです。
Ursula Futura
2021年 / ウィーン(オーストリア)
口吹きガラスによるプロダクトデザインスタジオ。デザイナーのKathrinが架空のペルソナ「Ursula Futura」を掲げ、ボヘミアの職人とともに一点もののガラスオブジェ、キャンドル、カラフェなどを制作。