壁に飾る陶器、という選択肢

壁を飾るなら、絵画かポスターか——そんな二択に、陶器のレリーフという第三の答えがある。フランス・トゥールーズのアトリエで一点ずつ手びねりされるその作品は、光の角度で陰影が変わり、壁そのものが表情を持ちはじめる。航空宇宙のエンジニアから陶芸家に転身したSophie De Marchiの仕事は、「つくる」の精度と「飾る」の感性が同居する稀有なもの。Maison & Objetの会場でこの作品に出会ったeditのバイヤーに、話を聞いた。

絵を探してたのに、陶器だった

編集部: ウォールデコを探していたと聞きました。最初から陶器で探していたんですか?

バイヤー: いや、実はそうじゃなくて。もともとペイントアートとか、フラットな作品で検討していたんです。それがMaison & Objetの最終日にクラフトのエリアを回っていたら、ソフィーさんのブースが目に入って。「あ、陶器だ」って。

編集部: その「あ」が聞きたいです。何に反応したんですか?

バイヤー: やっぱりレリーフの存在感ですね。壁に掛けるものなんだけど、フラットじゃなくてモチーフが浮き出ている。光が当たると陰影が出て、オブジェのような質感になるんです。食器や照明などいろんなアイテムがあったなかで、このウォールレリーフにいちばん惹かれました。

30年のキャリアを土に変えた人

編集部: ソフィーさんって、もともとエンジニアだったんですよね。

バイヤー: ブースでお会いしたとき、本当に柔らかい雰囲気の方でした。お写真からも伝わると思うんですけど、穏やかに微笑んでいらっしゃって。ものづくりへの愛情が自然ににじみ出ている感じ。

編集部: 釉薬も自分で調合されているそうですね。

バイヤー: そうなんです。シリカとかチョークとか長石とか、原料から自分で配合して釉薬をつくっている。「白」「砂」「黒」という3つのシグネチャーカラーがあって、コルシカ島の風景がインスピレーション源だと聞きました。陶器って生き物みたいなもので、釉薬と土の配合で表情が全然変わるんですよね。

日本の壁に、40cmの陰影

編集部: 今回、editではどんなセレクトを?

バイヤー: 9ピースで1セットになっているウォールレリーフです。Maisonで見たなかから、日本の住宅に入れやすい40cmのサイズを選ばせていただきました。すべて手作業でつくられているので、同じ型でもひとつひとつ表情が違う。

編集部: 益子焼みたいに、日本にも手仕事の陶器文化がありますけど、壁に飾るっていう発想はちょっと新鮮ですね。

バイヤー: そうなんです。日本だと陶器って器のイメージが強いけど、壁面を彩るという使い方がおもしろいなと。絵画ともポスターとも違う、触れたくなる質感がある。ぜひ店頭で、光の当たり方による変化を見てほしいです。


SOPHIE DE MARCHI

フランス・トゥールーズ近郊を拠点とする陶芸家Sophie De Marchiによるセラミックブランド。グレス(炻器)を素材に、ろくろ成形と自家調合の釉薬で、壁面ピース・照明・テーブルウェアを制作。Maison & Objet出展。

公式サイト:sophiedemarchi.com
Instagram:@sophiedemarchi_ceramique

JOURNALトップに戻る